幻臭

そんな言葉があるのか知らない。
幻覚、幻視、幻聴という言葉があるのだから、眼も耳も騙されてるんだったら、鼻だって騙されたっておかしくないだろう。
ツーリングで一日中排気ガスにまみれていたせいだろうか。
朝起きても、家から出ていないにも関わらず、ずうっと排気ガスの臭いがしている。
もちろん、家の中に排気ガスを発生させる装置はない。
だからこれは、幻じゃないかと考える。
昔聞いた話だが、四肢を失った方が義手義足を使用するうち、義手をどこかにぶつけた時に、「痛い」と言ってしまうらしい。
身体との接合部ではなく、義手のところらしいのだ。
また、義手義足を使わなくても、失った手や足の先が痛むという感覚があるという。
結局のところ、身体を統合している脳が、痛みの箇所のマッピングを誤ってしまうということのようだ。
見える/見えない、聞こえる/聞こえない、痛い/痛くない、臭う/臭わない
どれも、脳が作り出す幻だとしたら、味覚だってきっと騙される。
いつの日か脳だけが存在し、神経の刺激に依って一生をまっとうする人間が現れるかもしれない。
脳だってニューロン網が解析されれば、コンピュータ網の中に移植することだって可能かもしれない。

閑話休題。


ふと思ったのだが、排気ガスの臭いは幻ではないという可能性もある。
鼻腔内に排気ガスを構成している化学物質が、残っているのかもしれない。
髪や髭、皮膚に付着している可能性は考えて、かなり入念に風呂に入ったのだが、鼻腔内までは洗わなかった。
鼻腔内の粘膜がどんなサイクルで異物を排出しているのか気になるのだが、あまり素人が分かるような情報はない。
もしかすると、このまましばらく排気ガス臭い状態が続くのかもしれない。
気にすれば気にするほど分からない。
ともあれ、今年もツーリングは楽しかった。

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