独りで

あまり人付き合いの良い方ではないから、独りでいることはしばしばある。
そのこと自体、特に苦でもないし、気楽なのだけれど、独りではできないことが幾つかある。

例えば、独りで焼肉屋に行けない。
コンロの埋め込まれた広いテーブルに陣取って、黙々と肉を焼いて食べるということが想像できない。
肉が嫌いなわけではないが、たぶん手持ち無沙汰な時間がかなりあるんじゃないだろうか。

でも、独りで寿司屋には行ける。
過去に出張や、ツーリングで訪れた街で、ふらっと地元の寿司屋で一杯呑んだりしたことがある。
刺身なんかをつまみに軽く酒を呑んで、好きなネタを幾つか握ってもらう。
注文の順番とか気にしない。
酒も入っているので、3貫も食べると満腹に近くなる。
だから、本当に食べたい3品を選ぶ楽しみもあって、その逡巡の時間もまた楽しい。
数千円で美味しいものを食べて、良い気分になれる。

これが居酒屋に独りで行けるかというと、ちょっと抵抗がある。
行ったことが無い訳ではないが、どうにも心の敷居がちょっと高い。
寿司屋と同じように過ごせばいいのだろうけれど、何かちょっと構えている自分がいる。
そもそも酒も好きだし、つまみも大好きな方だ。
たぶんあの空間が合ったり合わなかったりするのかもしれない。
合わないのなら、さっさと退散すればいいのだろうけれど、酒自体は好きなのでどうにも困る。

同じような感じのものが、喫茶店だと思う。
コーヒーチェーン店は気兼ね無く入れる。
だが、こだわりの喫茶店と言われると、ちょっと及び腰になる。
珈琲自体は大好きで、豆から挽いたものが飲みたいと思っているのだけれど、それを全面に押し出されると、ちょっと困る。
シアトル系のコーヒーで、カスタマイズとか細かい好みとか、注文するのは恥ずかしい。
最近のサードウェーブとか、飲んでみたいなという気持ちはあるけれど、わざわざ行くのも、なんか億劫だ。
何も言わずに珠玉の一杯を出してくれ、と思っているのに、これが私の最高傑作です、と出されると戸惑ってしまう。

こう書いてみると、自分自身が何だか面倒くさい奴なんじゃないかと思う。
たぶん独りで何でも出来る人は、きっと人付き合いも良いのだろう。
それならば、独りで出来ることを少しずつ増やしてみようか、と思う一方で、まあそれはそれでも良いんじゃないかとも思っている。

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